Dの気ままな雑記

いろいろ置く予定

鷹匠 ヴェロニカ・ホーキング

「僕は、父をも越える鷹匠になる。」
それがヴェロニカ・ホーキングの口癖だった。
幼い頃から見続けてきた逞しく、大きな父の背。その腕には、相棒である大鷹を従えていた。その姿を尊敬し、そうありたいと願った彼女が同じ道に足を踏み入れたのは至極当然のことのように思えた。可愛らしいドレスも、少女としての幸せも、それらを蔑ろにし道端に捨ててまでも彼女は既に敷かれた道を歩き出した。
無くなった右脚と、潰れた右目。その障害は大きなものであった。健常者より狭い視界、劣る動き、それらを抱えて父を越える鷹匠になることは、極めて困難なことであることは明白だった。恐らくは、多くがそこで諦めるべきだと悟るだろう。それでも彼女は諦めなかった。彼女にとって、脚が無いことも目が潰れたことも、その歩みを止めるための言い訳にはならないのだ。たとえ偽物の脚であろうとも、彼女は確かにその脚でもう一度地を踏みしめ歩き続けた。
やがて時は流れ、芽は巨木に、蛹は蝶に、そして少女は女性へと成長していく。幼く頼りなかった少女の身体は逞しくも美しく成長し、その執念とも言える鋼鉄のように曲がらない感情のせいか、彼女は健常者と変わらない程の鷹匠になった所か、遥かに彼らを凌ぐ程の実力者へと力を開花させた。周りの人間にもその実力を一目置かれ、やがて父をも越えるのではと噂された。

「ヴェロニカ、入るぞ」
月がまるで手に掴めそうな程に鮮明に美しく輝く晩のことだった。おぼろげな月明かりと淡い夕陽のランタンの明かりを頼りに、携帯している自動拳銃を整備していたヴェロニカの部屋に父が入ってきた。
「父さん、どうしたんだこんな夜更けに。」
「いや…深い意味はないんだ。ただ明日も魔物の討伐を依頼されたと聞いてな」
「ああ、大型上級魔物の討伐を依頼されたんだ…僕に」
マガジンを入れながら、ヴェロニカは何でもないように受け答えた。
「大型上級魔物…そうか、お前はもう、一人前の鷹匠なのだからな。依頼が来ても当然か…」
「いや、まだ一人前とは言えない」
ダークブラウンの作業机に重い音をさせながら自動拳銃を置くと、月光を背負うように立ち上がり真っ直ぐと、射抜くように父の目を見た。
「僕はこの依頼を遂行する。誰の力を借りることもなく、己の力のみで。…それができたとき僕は漸く、父さんの隣に並ぶことが出来る」
その目には鈍く鋭い光が宿っていた。まさに、獲物を見据える鷹そのものだった。
「そして僕は、父さんを越える」
「…そうか」
一度目を伏せ、応えるようにヴェロニカの目を見返す。それは、幼き日から見続けてきた、鷹匠の父の眼だった。
「お前が無事依頼を終えて、私を越えていくことを願っている。…遅くに邪魔をしたな。明日は早いのだろう、整備も程々に、もう寝ろ」
「…必ず、帰ってくる。おやすみ、父さん」
「ああ、おやすみヴェロニカ」
娘の部屋を出た彼は、そっと俯いた。それは、どこか寂しささえ感じさせるような顔だった。
何故ならヴェロニカはもう

次の日、早々にヴェロニカは家を出た。相棒であるアーノルドを引き連れ、「今夜には戻る」という言葉を残して。
ヴェロニカの両親は、いつも通りの日常を過ごした。娘が無事に、いつものように帰ってくることを静かに願いながら。
しかし、日が落ちてもヴェロニカは帰ってこない。それどころか、月が真上に登っても帰っては来なかった。もしかしたら、討伐が長引いて依頼先で夜を明かすのかもしれない。一概の不安を感じながら、梟さえも鳴かない静かな夜は更けていった。
次の日の朝、ヴェロニカは帰ってこなかった。最悪の未来を想像しながら、どうかそうであってくれるなと祈りながら父は依頼先へ向かった。
依頼先、対象の魔物の亡骸が転がっていた。やはり、ヴェロニカは依頼を既に終えていたのだ。安心して家に帰ろうとした。しかし、足元から更に先へと血溜まりがぽつりぽつりと伸びていた。恐る恐る、草を踏み分けながら血溜まりの先へ向かうと、そこにヴェロニカはいた。身体中を無残に喰い荒らされ転がったまま。確認せずとも分かった、既に死んでいるのだと。そして傍には自動拳銃が投げ出されたままだった。マガジンは入っていなかった。
この喰い跡は対象のものではない。対象を討伐し魔力を消費したヴェロニカを襲い、殺したのは恐らく対象の手下のような存在だったのだろう。辺りに転がる中級魔物の骸の数から、相当な数に襲われたことは明白だった。
内臓の無くなった軽いヴェロニカの身体をそっと抱きしめ、父は泣いた。鷹匠の師ではなく、一人の父親として。
それからはあっという間だった。棺を穴に入れられ土を掛けられながらももしかしたらまだ生きているのではと錯覚させるほどだった。それでも、これが現実であることは変えようのないことだった。父は一人、「Veronica-Hawking」と刻まれた真新しい墓石の前に跪き、風に攫われるくらい小さく呟いた。
「お前は、俺などとっくに越えていたよ。お前が今も追い続けていたのは、俺の幻影だったんだ…ヴェロニカ」
彼が流した涙は、誰も知ることなく、地平線に沈んでいくオレンジに溶けて消えていった。

ある朝私は透明人間になった

私はある朝、透明人間になった


私は今日も、いつも通りの朝を迎えた。窓から太陽の光が差し込んできてとても眩しい、目を軽く擦りながら横たわった重い身体をゆっくりと起こした。暖かな泥に浸かっているかのような、寝惚けた頭もようやく覚めて、くっついてしまいそうな程細められた目を開いた。そしてここで私はある異変に気付いた。

「…私の、身体が」

私の手は、本来あるべき質量を持たずに、壁の白さが透けて見えていた。このときの私は、慌てすぎて逆に冷静になっていた。壁に掛けられた姿見の前に移動し、恐る恐る鏡を覗き込んでみた。

…そこに映ったのは、白い壁だけだった。そう、壁だけ…私の姿は映っていなかった。私はどこか不気味すぎるくらいに冴えた頭で、自身が「透明人間になった」という事実を認知した。

事実を知ったところで、私にはこの状況をどうにかする術を持っていなかった。透明になった理由も、全くと言っていいほど心当たりがない。私はよく平坦だと言われるが、私もそう思っている。こんな状況の中でも、誰かの物語を遠くから見ているみたいに、他人事みたいに木製のドアをすり抜けふらふらと家の外へ出て行った。


今日の空はどこか不安げだ。まるでこの出来事を予期していたかのように暗く、落ち着かないものだった。私は空を見上げ、多くの人々が往き交いする道の端を通り、特に行く宛も目的もなく気ままに歩き始めた。しかし上を見て歩いていたからか、私は前から歩いて来た人に気付かなかった。思わずぶつかってしまう、と思い「すいません」と謝ろうとした。しかし謝ろうと開いた口からは何も言葉は零れなかった。謝る必要がなかったから。そう、ぶつかると思った瞬間、その人は私の身体を通り抜けてしまったから。

私ははっと気付く。そうだ、今の私は透明なんだ。その瞬間、昔誰だったかに言われた言葉が脳裏を過ぎる。

「いてもいなくても変わらない」

そのときの私は、その通りだとただの無感動の同意しかなかった。だがどうだ、今の私は。本当に、いてもいなくても変わらないじゃないか。私は透明になったのではない。

元々、透明だったのだ。

私はいてもいなくても気付かれない、別にそれでもいいと、気付いてもらう努力を何もしなかった。けれど何故だろう、気付いてもらえないのが当たり前だったのに、こんなにも冷たい。

私は思わず、近くを通りかかった人の肩に手をかけようとした。けれど触れようと伸ばした手は、簡単にすり抜ける。「あの」大きな声で話しかけたつもりが、誰の耳にも私の声は届いていない。

人々はざわめきの中、道を進む。当たり前みたいにこうして世界が回っている。それなのに、私だけがそこにいない。

頬を何かが伝う感触がして、私は自分が泣いているのだと気付いた。それでも、零れた涙は、染みすら作らなかった。私は自分が思っていたそれ以上に、誰にも気付いてもらえていなかったと今初めて気付いた。私という個人は、誰の目にも初めから映っておらず、誰の世界にも存在していなかったのだ。私は透明になってさえも、いてもいなくても何も変わらなかった。

「誰か」

誰も振り向きはしない。誰も歩みを止めはしない。

「誰か、気付いて」

私の声は、吹き抜けていった風にさえ掻き消えた。

それから、ただ風の赴くままに、空気の私は街中を彷徨った。

私は、本当は存在していなかったのかもしれない。悲しみのなか、ただ居場所を、私の存在する世界を探してふらふらと宛て所なく歩き回った。

それから私はどうしていたのか覚えていない。気が付いたらまた朝で、私の腕は透けていた。

こうして私のいない一日は、何も変わらないまま終わった。誰も私の存在に気付かないまま。

そしてまた、私のいない一日が始まる。

お題「椿の終わり」

僕は、あの日を一生忘れない。


確か3月の上旬のことだっただろうか。雪は溶け、時折冷たい風が吹き付けるものの暖かい日光が燦々と降り注いでいた。春の始まりに生き物たちは皆歓喜し、芽吹き、地から這い出てきた。

僕はまた学校が始まってしまうなと、別れと新しい出会いを憂い、1人閉め切った自室でパソコンに向き合っていた。

そんな春休みのある日のこと、僕は財布とスマホだけをジーンズのポケットに入れ外を歩いていた。使っていた赤外線マウスの電池が切れたのだ。家で換えの電池を探したが見つからなかったので、仕方なくこうして買いに来ていた。

吹き付ける冷たい風の中、マフラーでもしてくれば良かったと後悔しながらコンビニに向かっていた。所々黒ずみのある、少し年季の入ったマンションの前を通りかかろうとした時、僕は何となしにふと上を見上げた。太陽の眩しさに目を細めながら、視界に入ってきたのは人影だった。屋上に立ち、腰まであるとも思える長い髪が風に揺れている。何で屋上なんかに…と不審に思いながら目線を戻そうとした時、その人影は僕の方を見た。そして微笑んだ―ように見えた。逆光のせいで顔は良く見えなかった、だから本当に微笑んでいたのかどうかは彼女しか知らない。ただ僕は、彼女が微笑んだのだと、そう感じた。

まるで時が止まってしまったかのように僕は動けなかった。

次の瞬間、呆気ないとも思えるほど簡単に、まるでテレビのドラマを見ているみたいに彼女はフェンスを飛び越えた。

あ、と思う暇もなく、重いものが地面に叩きつけられる音がした。辺りは騒然とし、悲鳴や119番に連絡をする声が響いた。僕は、しばらく屋上の虚空を見つめたまま唖然とし、恐る恐る目線を下に向けた。

赤、赤かった

思わず尻餅をついて、ただ彼女の赤を眺めていた。遠くから、サイレンの音がただ聞こえていた


それから僕がどうしたのか、よく覚えていない。警察に事情聴取された気もするが、何を話したのかもよく覚えていない。

ただあの日から、僕の脳裏にはあの赤と、微笑みだけが一生消えない焼印のようにこびりついている。

赤い椿の花が落ちたように、落ちて茶色く染み付いて土色になるように

そう、言葉で表すならまさに

落椿

お題「人間に棄てられた合成獣」

バケツを引っくり返したような、激しい雨が降り注ぐ。アスファルトを、コンクリートのビルを、無数に浴びせられる弾丸のように打ち付けた。視界が不明瞭になるほどの雨は、まるでカーテンのようだ。人影もなく、ただ雨音だけが街全体を包み込んでいた。

ビルとビルの隙間、伸びる配管と影に覆われた底に、1匹の生物がいた。凛々しい獅子の顔、立派な鷲の下半身、だらしなく垂れ下がった蛇のようなぬらぬらとした鱗の尾。そう、合成獣〈キメラ〉だ。

だが耳は欠け、羽は抜け落ち痛み、鱗は剥がれ、おびただしい血が流れてそこらを真赤な血の水溜りに染めた。息は荒く、今にも生命の灯火が消えてしまいそうだ。

彼はかつてはただの獅子であった。だが研究所に連れてこられ、麻酔をかけられ。次に目が覚めた時、彼は異形の姿になっていた。身体を切り開かれ、異なる遺伝子を組み込まれ、獅子ではなくなった彼。科学者たちは実験の成功を大いに喜び、彼を支配しようとした。しかし彼は、百獣の王の名を与えられた者。幾ら薬を打ち込んでも、その矜持を忘れることはなかった。それどころか何度も脱走を試み、科学者たちにその牙と爪を振るった。

あまりにその被害は大きく、彼は結局失敗のレッテルを押された。科学者たちな檻の中の彼に、同じように研究所で合成獣として歪められた動物たちをけしかけた。薬に侵され、かつての野生を忘れた彼らの牙が、爪が、容赦なく浴びせられた。大量の血を流し、瀕死の状態となった彼を科学者たちは人の寄り付かない、路地裏に棄てた。もう彼の傷が塞がらないことを見越してだ。

彼は幸せだろうか。色のない空でも、アスファルトの地面でも、配管とコンクリートの壁に囲まれても、排気ガス混じりの空気でも。

望んだ外に出られて。


井戸の底のような冷たさの中、彼の生命の灯火はそっと、儚く消えた。

アスファルトに雨が染み込まないように、彼は地に還ることもなく、誰かに看取られることもなく、ただ静かに彼の亡骸は横たわっていた。

Regain Happiness 第三夜


振り下ろされた短剣を避け、相手の首にナイフを振りかざす
ナイフの切っ先が肉を裂き、骨を砕く。傷口から血が飛び散って手やナイフを赤く染めた
落ちた首がぐちゃ、と音を立てる。虚ろな目をして、苦悶の表情を浮かべたまま固まっていた
さっきまで生きていたとは思えない、醜悪な肉の塊だった
俺が、奪った
俺がナイフを振りかざさなければこの人間には変わらない明日が来る筈だった
俺が、奪ってしまった
きっと、守りたい者がいたのだろう
きっと、愛する者がいたのだろう
きっと、帰るべき場所があったのだろう
俺が、殺した
手にはまだ生暖かいぬるりとした感触
鉄臭い、血と硝煙の混じった匂いが肺の中に広がる
「…気持ち悪い」
目の前の景色が揺らぎ、思わず膝をつく。血を流しすぎたかもしれない

胃が、ねじ切れそうだ
頭が痛い
苦しい

だが、ここは戦場だ。こんな所では恰好の的になる。
誰も助けてはくれない。自分のことは自分で守るしかない。
よろよろと立ち上がる。意識もはっきりとしないのに、足が勝手に動く
向かう先にはーー人
こちらに気付くと、武器を手に取り向かってきた
まだ、足りないのか
こんな状態になってまでも血を望むのか
「…悪魔と呼ばれても仕方ないな…」
勢いをつけて地を足で蹴る。
目前に迫った相手の急所目掛けて
ナイフを、振り下ろした


「……(落ちない)」
身体はしっかりと洗った。なのに、落ちない
こびりついた血が、染み付いた匂いが取れない
赤い、赤い、赤い、赤い
あかいあかいあかいあかイアカイアカイアカイ
布でひたすら手を拭う。力を入れすぎているのか、手が擦り剥けたかのようになっていた
「…D、手が真っ赤になってるよ」
急に声を掛けられてぴくりと身体が跳ねる。声の主はニクルだった
声を掛けられるまでまで気付かなかったようだ。
ニクルは俺の傍に座り込むと、手からやんわりと布を取る。そして手を握ると、痛々しげに見つめて「冷やす物持ってこようか?」と言った
「…ニクル、お前の手、汚れるぞ」
そう言うとニクルは少し目を見開いて、泣きそうな顔で笑った。
「僕も、汚れているよ」
そう言うと抱きしめてきた。腕から伝わる確かな熱、心臓の音が聞こえる。
昔はよくこうやって一緒に眠っていたな
ぼんやり思い出しながら、静かに目を閉じた

神様とか悪魔とか

【魔界の四王】

アマイモン 地の王
パイモン 炎の王
エギュン 水の王
オリエンス 風の王
七つの大罪の悪魔】
ルシファー 傲慢
サタン 憤怒
ベルフェゴール 怠惰
アスモデウス 色欲
マモン 強欲
【魔界の七君主】
ルキフゲ・ロフォカレ 魔界の宰相
リリム 空の軍勢の君主
ザラキエル 霊魂の看守
ラハブ 原始の海の支配者
ドゥマ 死の沈黙の天使
メフィスト・フェレス 狡猾な破壊者

【神】
創造の神 クレアーレ
神々の王(天空の神) アイテール
太陽の神 アポロン
月の神 アルテミス
戦いを司る アレス
知恵を司る アテナ
豊穣の神 ディオニューソス
海の神 ポセイドン
大地の神 ガイア
炎の神 ヘーパイストス
風の神 アネモス
【運命の三女神】
運命を紡ぐ者 クロト
運命を割り当てる者 ラケシス
運命を断ち切る者 アトロポス
【冥界】
冥界の主 ハデス
冥界の川の渡し守 カロン

【天使】
神直属の親衛隊
ミカエル 神の代弁者 炎
ガブリエル エデンの園の統治者 水
ラファエル 癒す者 風
ウリエル 死後の魂を選別する 土


【織天使セラフィム
特徴:神の声を聞く者
役割:天使を統括する
智天使ケルビム】 
特徴:神性を伝える物
 役割:エデンの園の守護
座天使スローンズ】 
特徴:卑俗を退ける
役割:神の王座の運び手(戦車)
特徴:神による統治を熱望する
役割:神の威光を伝える
力天使ヴァーチュズ】
特徴:力を引き出させる
役割:神の恩恵と勇気を授ける
能天使パワーズ】
特徴:原理と同一化する
役割:宇宙の物理法則を保持
        実戦において前線に立つ
権天使プリンシパリティーズ】
特徴:正義を導く
役割:地上の国や都市を支配
【天使エンジェルズ】
役割:人に接する

【魔界】
サタンを主とする、悪魔の支配する世界。世界において闇に値する
【天界】
アイテールを主とする、天使の支配する世界。生命の樹セフィロトを守り、世界のバランスを保つ
【冥界】
ハデスを主とする、死後人の犯した罪を償う為の世界。刑期を終えた場合、そのまま生命の樹セフィロトに還される
【人間界】
命あるものが生きる世界。無数に分かれている。
【???】
何処にあるかもわからない、何があるのかもわからない、光も闇もない世界。創造神クレアーレがここに1人、創り出す為に存在する。
クレアーレがこの世界から居なくなる、つまり世界の崩壊を意味する

昔の話

「ねえ、ヴァン?」

「ん?何だ?」

晴れた日の昼下がり、私とヴァンとレヴァルは家に居た。いつもならヴァンは仕事の筈だけど、私が身籠ってからは気にかけて休んでくれることが増えた。

「お腹の子、どっちだと思う?」

私は自分でお腹をさする。ヴァンもそれに手を重ねて愛おしそうに見つめていた。

「そうだなあ…レヴァルが男だったから、次は女がいいなあ」

「あら、私も実は女の子なんじゃないかって思ってたのよ。

するとお腹の子が僅かに動いた感覚がした、まるでその通りだ、とでも言うように。

「名前は、男だったらリヴァルで、女だったらディルにしよう!」

「ふふ、随分気が早いのね。」

するとレヴァルも来て私のお腹を相変わらず不思議そうに見つめている

「いいかレヴァル、お前は兄ちゃんになるんだぞ?」

「…?にーちゃん?」

「そうだ、兄ちゃんは妹や弟を守ってやらないといけないんだ。だからこの子をちゃんと守ってやるんだぞ」

「…うん、ぼく、まもるよ!だって、にーちゃんなんだもんね!」

そう言ってレヴァルもお腹を小さな手でさする。はやくでておいで、なんて呟いて。



ねえ、あなたが生まれてくることをこんなに望んでくれる人達がいるの。皆あなたを待ってるのよ。


その可愛い顔を私達に見せて、その声で私達を呼んで。

私が死ぬまで、毎年あなたの誕生日を祝おう。あなたが辛い時、私達が支えてあげる。いっぱいいっぱい、あなたを愛してあげる。そうして、大人になって、愛する人を見つけて、家族を作って………

そして、幸せになって。幸せなあなたの顔を私に見せて。そしたら私は、一番にあなたを祝ってあげるの


ふふ、もう待ちきれないな

だから、早く生まれて来てね

どこまでも愛おしい、私達のディル