Dの気ままな雑記

いろいろ置く予定

Regain Happiness 第三夜


振り下ろされた短剣を避け、相手の首にナイフを振りかざす
ナイフの切っ先が肉を裂き、骨を砕く。傷口から血が飛び散って手やナイフを赤く染めた
落ちた首がぐちゃ、と音を立てる。虚ろな目をして、苦悶の表情を浮かべたまま固まっていた
さっきまで生きていたとは思えない、醜悪な肉の塊だった
俺が、奪った
俺がナイフを振りかざさなければこの人間には変わらない明日が来る筈だった
俺が、奪ってしまった
きっと、守りたい者がいたのだろう
きっと、愛する者がいたのだろう
きっと、帰るべき場所があったのだろう
俺が、殺した
手にはまだ生暖かいぬるりとした感触
鉄臭い、血と硝煙の混じった匂いが肺の中に広がる
「…気持ち悪い」
目の前の景色が揺らぎ、思わず膝をつく。血を流しすぎたかもしれない

胃が、ねじ切れそうだ
頭が痛い
苦しい

だが、ここは戦場だ。こんな所では恰好の的になる。
誰も助けてはくれない。自分のことは自分で守るしかない。
よろよろと立ち上がる。意識もはっきりとしないのに、足が勝手に動く
向かう先にはーー人
こちらに気付くと、武器を手に取り向かってきた
まだ、足りないのか
こんな状態になってまでも血を望むのか
「…悪魔と呼ばれても仕方ないな…」
勢いをつけて地を足で蹴る。
目前に迫った相手の急所目掛けて
ナイフを、振り下ろした


「……(落ちない)」
身体はしっかりと洗った。なのに、落ちない
こびりついた血が、染み付いた匂いが取れない
赤い、赤い、赤い、赤い
あかいあかいあかいあかイアカイアカイアカイ
布でひたすら手を拭う。力を入れすぎているのか、手が擦り剥けたかのようになっていた
「…D、手が真っ赤になってるよ」
急に声を掛けられてぴくりと身体が跳ねる。声の主はニクルだった
声を掛けられるまでまで気付かなかったようだ。
ニクルは俺の傍に座り込むと、手からやんわりと布を取る。そして手を握ると、痛々しげに見つめて「冷やす物持ってこようか?」と言った
「…ニクル、お前の手、汚れるぞ」
そう言うとニクルは少し目を見開いて、泣きそうな顔で笑った。
「僕も、汚れているよ」
そう言うと抱きしめてきた。腕から伝わる確かな熱、心臓の音が聞こえる。
昔はよくこうやって一緒に眠っていたな
ぼんやり思い出しながら、静かに目を閉じた